鉄の肺
[今日の雑学 07.12]

 世界最高峰エベレストの頂上に、酸素ボンベを使わず10回も立った男がいる(朝日7月11日)。アン・リタ、50歳。知らないという人も多いだろう。それもそのはず、かれは登山隊の隊員ではない。少なくとも正隊員では。
 アンはガイドだ。俗にいうシェルパ。世界の登山家たちから「鉄の肺を持つ超人」と呼ばれ、絶大な信頼を得ている。
 生まれはエベレストのふもと、ネパール・クンブー地方のヒラジュン村。標高4000メートルにあるシェルパ族の村。
 そう、シェルパというのは本来民族の名前。「東方の人」という意味。400年前にチベットから移住してきたとされ、チベット仏教を信じる。たまたま高所に強かったので各国の登山隊からガイドとして雇われ、民族名が山岳ガイドの代名詞となった。
 アンの身長は 167センチ、体重67キロ。格別目立ったところはない。その中にある鉄の肺。彼は言う。趣味や功名心で登っているのではない、家族を養うのにこれしか手段がないのだ、と。
 生きることの強さ、そして厳しさ。その原型を見る思いがした。



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Unplugged今日の雑学>1998.07.12